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量子力学の基礎:量子世界の自然像とは
量子力学は相対性理論と並ぶ現代物理学の基盤として、素粒子の相互作用や原子核の物理から様々な物質の性質や化学反応、初期宇宙の理解に至るまで、非常に広い範囲の科学現象の説明に用いられています。また技術応用の面では、パソコンや携帯電話など半導体を用いる電子機器などの設計には量子力学が必須であり、最近の量子コンピュータや量子暗号通信といった量子情報科学の発展を含めて、その影響は社会生活のあらゆる分野に及んでいます。ところが、このような現代社会を支える量子力学は私たちの常識を越えたパラドックス的な物理現象の存在を予言することが知られており、その顕著な例に量子もつれ状態にある2つの量子系の間に生じる「非局所相関」と呼ばれる性質があります。これは2つの系がいくら遠距離に離れていても各々の系の物理量の測定結果が互いに関連する(非局所相関がある)性質で、量子情報技術はこの性質を利用するものです。しかしそれは物理量の実在性そのものに疑問を投げかけるものであり、量子力学が作られた当時からアインシュタインらがその重大性を指摘していました。この問題は、その後、光子を用いたベル不等式の検証実験を通して研究が行われ、現在では中間子の崩壊や宇宙レベルの相関現象を通して、さらに解明が進められています。また、ハイゼンベルクの提示した量子の世界の原理を示す不確定性関係や、量子現象の確率性(偶然性)の本質についても、近年、より広い観点から見直しがなされ、その深い意味が明らかになりつつあります。このような量子力学の基礎の研究は、人類のこれまでの伝統的な自然界の描像に大きな変革をもたらすとともに、様々な分野の物理学の今後の発展に新たな視点を与えるものとして期待されています。
図1: 量子もつれと非局所相関
図2: B中間子の振動現象
所属学会
日本物理学会
米国物理学会(American Physical Society)
主な研究業績
- 量子異常を持つゲージ理論の量子化(Phys. Lett. B, 1987).
- 可解模型とW代数(Phys. Rep., 1992).
- 商空間上の量子化とゲージ構造(Ann. Phys., 1995).
- 特異ポテンシャルと量子境界条件(J. Phys. A, 2003).
- 同種粒子の量子もつれ(Phys. Rev. A, 2013).
- 一般量子測定と不確定性関係(Entropy, 2020).
- B中間子を用いたベル不等式の検証(Phys. Rev. D, 2021).