Laboratory

素粒子原子核実験研究室

●素粒子・原子核物理実験は、自然界におけるミクロな現象を、実験によって解明するのを目的としています。

●実験手法としては、粒子を加速して衝突させることで、物質の性質を調べる加速器実験と、素粒子の反応において非常に発生がまれな現象を地下で観測する非加速器実験があります。

●本学科で研究している加速器、非加速器実験を紹介します。

加速器実験:反クォークってなに?

●素粒子・原子核物理の実験では、 粒子加速器を使う場合が多いです。円形の粒子加速器の場合、円の周長が数十km になるものもあります。加速された粒子を用いて素粒子・原子核の内部の構造を調べたり、新しい粒子を作ったりします。

●原子の真ん中に原子核があり、それを構成しているのが陽子と中性子です。陽子と中性子は基本的にそれぞれクォーク3個からできていることが約50年前からわかっています。更に詳しく調べると、陽子や中性子の中には反クォークという、クォークの反粒子も存在していることがわかります。我々の現在の宇宙は物質優勢ですが、粒子加速器で加速された粒子を使って適切な実験を行えば、陽子や中性子の中の反クォークを研究することができます。

非加速器実験:地下から素粒子の謎にせまる

●素粒子実験の反応には、非常に発生がまれな現象があります。例えば、陽子崩壊、ニュートリノの反応、暗黒物質を始めとする未知の粒子の探索です。それらの観測のために、宇宙から飛んできて、地上に降り注ぐ宇宙線が遮蔽された地下に検出器が作られます。

●岐阜県神岡の地下実験施設では、色々な素粒子観測実験が行われており、これまで2つのノーベル賞を獲得しています(2002 小柴先生・超新星ニュートリノの観測、2015 梶田先生・ニュートリノ質量の発見)。

暗黒物質探索実験

●暗黒物質とは、標準理論で説明できない物質として、宇宙には通常の物質の5倍程度存在すると考えられています。宇宙からの背景輻射や、銀河の回転速度を調べることで存在が予想されています。

●神岡での地下実験施設でも、XMASS実験という、暗黒物質の探索実験が実施されています。XMASS実験は、世界最大級の、約1トンの液体キセノン(-100℃)を用いており、暗黒物質とキセノンが反応したときに発生する光を、光電子増倍管で観測します。

●2010年の観測開始以来、色々なタイプの暗黒物質を探索してきましたが、まだ未発見です。

● 暗黒物質探索実験は、世界中で実施されています。我々は、将来の新検出器のために、観測感度向上の研究も実施しています。

教員紹介

素粒子原子核物理実験研究室

小川 洋
専門素粒子実験