Faculty
シミュレーションと生命情報科学
電子を真空中に大量に集めても超伝導は起きず、クーロン斥力で飛び散って終わりです。しかし金属に閉じ込められた電子は低温にするとたいてい超伝導になります。この違いを説明するのが量子力学と統計力学です。本研究室では、これらの学問と計算機シミュレーションを用いて物質の性質(物性)を研究しています。最近は分子動力学を用いて蛋白質等のシミュレーションを行い、もつれを位相幾何学(トポロジー)で表す基礎理論から生命情報科学(バイオインフォマティクス)を用いたゲノム創薬への応用までを研究しています。一方、量子力学や統計力学は他分野にも適用できます。例えば、原子核理論で50年前に生まれたランダム行列理論は、インドの魔法の数学と合体してランダム系を解析する強力なアイテムとなり、経済物理学や多変量解析へ応用されています。このランダム行列理論を用いて、本研究室ではラットの動物実験によるニューロンデータを解析し、異種ニューロンの普遍的な分類を行い、覚醒・睡眠・麻酔等の意識状態を多様体上の幾何学として表現する研究を行っています。このように、ゲットしたアイテムの効力を最大限駆使して、固定観念に囚われず自由に発想することも理論物理学としては重要です。
所属学会
日本物理学会
情報計算化学生物学会
日本バイオインフォマティクス学会
主な研究業績
主な研究発表題目として、低次元磁性体の磁化プラトーの研究、ラッティンジャーの定理の証明、遷移金属酸化物における軌道液体の理論、拡張ハーパー模型におけるフラクタルと量子カオス、非可換空間における磁場中の電子状態、蛋白質とリガンドの相互作用の分子動力学による解析、ランダム行列理論を用いたニューロンの普遍的分類などがあります。