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室温超伝導を目指して
室温超伝導への道
超伝導体は、ある温度以下で電気抵抗率という物理量が完全に“0”になる特性を示す物質のことを指します。この特性から、コイル状にした超伝導体に大電流を発熱なく流すことが出来るため、小型の強磁場マグネットへの応用化が出来、現在、医療機器のMRIやリニアモーターカー等に実用化されています。一方、物質が超伝導へ転移する温度(以下転移温度)は室温よりも低く、応用化には液体ヘリウム等の冷媒で冷やす必要があります。そこで、室温において超伝導を発現する物質を目標とし、少しでも転移温度の高い物質の開拓が現在も精力的に行われています。超伝導体はBCS理論で説明可能な超伝導体(従来型超伝導体)と、その理論では説明出来ない超伝導体(非従来型超伝導体やエキゾチック超伝導体、新奇超伝導体等と呼ばれています)に大別することが出来ます。これまでに高い転移温度を示す超伝導体の多くは後者の超伝導体に属することがわかっています。そのため、新奇超伝導体を数多く発見し、たとえ転移温度が低くとも、その機構を解明することがケーススタディとして超伝導研究では非常に重要であり、最終的には室温超伝導体の発見につながると考えています。
新奇超伝導体の開拓~秩序状態の制御~
新奇超伝導体の多くは、層状構造を有することや、秩序状態の近くで超伝導が発現するという共通の特徴を持つことが(あくまでも経験的に)わかっています。秩序状態とは、物質中の電子がある規則に従って配列する現象を指します。例えば、電子が格子以上の周期で波を作る電荷密度波や、電子のスピンの方向が一定の規則に従って配列する強磁性や反強磁性等が例として挙げられます。これらの秩序状態を様々な方法で破壊すると超伝導が発現します。そこで私の研究では、超伝導を示す物質の秩序状態の観察や、秩序状態を持つ物質の秩序の抑制による超伝導化を試み、どのような秩序状態の近くで超伝導が発現するかを明らかにすると共に、さらなる新規超伝導体の開発を行い、高い転移温度持つ超伝導体の創出を目指しています。
新機能性材料への応用~幅広い視野での研究~
新奇超伝導体の開発を行う中で、新たに発現した特性が他の材料分野では非常に有用なことがあります。超伝導分野でも他分野との知識の融合により、新たな領域が開拓された例もたくさんあります。そのため、超伝導のみだけではなく、他の機能性材料として応用できるかを俯瞰出来る広い視野を持ちながら研究を行いたいと考えています。室温超伝導の発見も目指しつつ、新規な機能性材料の開発にも目を向けて、世界を変える材料の発見を達成したいと考えています。
所属学会
日本物理学会
応用物理学会
日本希土類学会
日本磁気学会
主な研究業績
BiCh2系超伝導体の磁性及び電荷密度に関する報告をまとめたReview論文です。
La(O,F)BiS2に微小量のPbを置換すると超伝導特性が向上することを発見した論文です。
BiCh2系超伝導体の一つであるLa(O,F)BiSe2の走査型トンネル顕微鏡/分光測定から、結晶内に発達している超周期構造を初めて観測した論文です。