研究記録

研究記録

プラズモイド衝突実験装置の改造

衝撃波を伴う磁気リコネクション現象など、天体プラズマにおいても普遍的に観測される無衝突衝撃波やそれに伴う諸現象の理解を目指した研究を進めています。

プラズマの運動エネルギーが磁気エネルギーを上回る条件では、磁場構造の自己組織化的形成など、特異な現象が観測されます。今回の装置改造では、衝突時のプラズモイドの速度や温度・密度などのパラメータ領域の拡大を目的とし、プラズマ生成部チェンバーやコイル形状などの大幅な改造を行いました。

2022年8月から約2ヶ月かけて行われた作業では、装置両端のプラズマ生成部を全て解体し、新たに設計されたものへと一新しました。改造後に生成されたプラズマは従来のものと比較して高温低密度であり、装置スケールに対して数倍の平均自由行程を持つ条件での衝突実験が可能となりました。

11月に試運転を完了し、相対速度およそ600 km/sでの実験に成功しています。設計値では1000km/s超でのプラズマ衝突が可能であり、無衝突衝撃波が生じることで知られる超新星残骸(〜1000 km/s)や太陽フレア(〜500km/s)と同等のパラメータ領域での実験により、衝撃波や磁気リコネクションによる粒子加速過程などの理解が進むものと期待されます。

装置改造により生成部の磁場強度を増強,相対速度1000km/sのプラズモイド衝突へ向け実験を開始

プラズマガンによるプラズモイド加速実験

磁化同軸プラズマガン(Magnetized Coaxial Plasma Gun:MCPG)の高性能化やそれを応用した研究開発を行っています。

MCPGはスフェロマック(Spheromak:Spk)と呼ばれる磁場構造を持ったプラズモイド(プラズマの塊)を秒速数百kmの速さに加速することができる装置です。Spkは磁化プラズマの緩和状態の一つで、磁気リコネクション現象など、天体プラズマと共通した物理現象の理解のための研究対象にもなっています。

このMCPGの射出速度を高め、後続する低温のプラズマや中性ガスを低減することで、核融合発電を目指した炉心プラズマの燃料粒子や磁束を供給する手法を開発しています。

駿河台キャンパスの実験室で開発された装置は、共同研究先であるTAE Technologies社(米国・カリフォルニア州)の大型FRC装置C−2U/Wに取り付けられ、入射実験が行われています。実験には大学院生も現地に長期滞在し参加しています。

駿河台校舎で開発されたCT入射装置とTAE社の大型FRCへの取り付けの様子

© Department of Physics, College of Science and Technology, Nihon University